こちらのコラムではテコンドーに活きる筋トレをご紹介していきます。
バーベルやダンベルを用いたものもご紹介したいところですが、本件では稽古の前後や自宅でできるように器具を使わない種目に限定しております。
基本的に筋トレはしっかりと行えばどんな種目でも何かしらで種目に活用できます。
その中で特に筋トレで培ったものがテコンドーに転用しやすい種目という意味で捉えて頂ければ幸いです。
テコンドーは体重階級制の競技ですので体重の増減に気を配りつつガンガン鍛えましょう。
腹筋トレ①
下記に二つの動画があります。
非常に似た動作ですが、効果には大きな差があります。比較してみましょう。
一枚目のほうでは腰が反ってしまっています。
たった拳一つ分のスキマですがその差は天と地ほど大きなもので、腰が反るということは腹筋に力がうまく入っていないことを意味しています。
ちなみにこれは小学生くらいの年齢の子が苦手な傾向にある動作で、走るのが苦手な子は一枚目の腰が反った状態で走ってしまっていることが非常に多くあります。
腹筋の力が入りにくく体幹は不安定になり、その上腿裏の筋肉の関係から、腰が反ると足が引き上げにくくなってしまい、結果として非効率な走り方になります。
本当に百害あって一利なしです。
百聞は一見に如かず、百文は一験に如かず。布団で寝ながらでいいので試してみましょう。
腹筋トレ②
①のものを膝を軽く曲げ、両足をそろえてやってみます。途端に強度が増します。
チェックポイントは①と同じです。
これらは腹筋に力を入れた状態で運動を行うために非常に大切な動作です。
チェックのみならず、それ自体もアップや筋トレとして導入することが可能です。
ちょっと補足の豆知識
テコンドーの蹴りが速いと言われるのは二つの意味合いがあります。
①脚の先端の速度が速い
②初動が速い
以下に特に特徴的な②の「初動が速い」に関してご紹介していきます。
キックボクシングやムエタイの回し蹴りの動作。上半身が先に動き、それに足がついてくる。つまり上→下。
テコンドーの回し蹴りの動作。腰を中心とした下半身が先に動き、上半身は補助的に動く。つまり下→下。
上記のような初動の違い、最初にどこが動くかの違いがあります。
先に腰と脚が動くテコンドーの蹴り方は動作の開始から相手への到達までの時間が非常に短く、これが②の「初動が速い」に繋がっています。
それぞれどちらも気の遠くなるような長い研究と研鑽から生み出された、競技特性に特化した動作の成り立ちをしています。
参考までに、テコンドーでは体験の時も白帯も黒帯も共通して必ず上のような「壁蹴り」という基本稽古を行います。
ここで腰を回し、足を引き上げる技術を徹底的に習得します。
この足を引き上げる動作には必ず腹筋を固める必要があるため、この基本稽古の動作は基礎筋力だけでなくバランス感覚を養い、走る事をはじめとした他の競技種目においても運動効率を向上させることに大いに貢献します。
オープン動作とクローズ動作
もう一つ、少々違った観点からの考え方をご紹介致します。
トレーニングのメニュー作成時に、競技特性から「オープン動作」と「クローズ動作」に分けて考えることがあります。
まず、クローズ動作とは足や手が一瞬でも地面に固定されている状態のことで、地面を蹴る、押す、支えることで力を出します。
歩く、走るなど日常生活のほとんどは地面を押す力を活用して動くクローズの動作です。
次にオープン動作とは、手や足が地面に固定されていない状態です。
具体例を上げますと、右足で片足立ちしているときには右足がクローズ、左足は宙に浮いているのでオープンです。
サッカーで右足でボールを蹴る瞬間は、左足が地面に固定されて軸になるのでクローズ、右足は宙に浮いているのでオープン、といった具合になります。
水泳では飛び込み台を蹴る瞬間だけはクローズ、泳いでいる最中は全てオープン、折り返しのターンはクローズになります。
競技動作のほとんどをオープン動作が占めるため、水泳において特に体幹が重要視されるのはこのためです。
これらの観点から考えると、オープンの動作は自身でバランスをコントロールしなければなりません。
これをテコンドーにあてはめて考えてみましょう。腕は常にオープンですので、特に足の状態を考えます。
以下、すべて跳んでいる間だけオープン動作、その前後の踏み切りと着地でクローズ動作です。
オープンとクローズに注目して観察するとまた違って見えるのではないでしょうか。
テコンドーでは跳躍しての突きや蹴りが難易度に比例して高得点に繋がります。
そのため、トレーニングを行う際もオープン動作なのかクローズ動作なのか、特に何に活用するために行うのかを考えながら行う事をおすすめします。
以下に一例を紹介します。
腹筋トレ③
足を地面や人で固定されているので、クローズな動作。手にはメディスンボールと呼ばれる重いボールを持っています。ダンベルなどでの代用が可能です。
足が固定されていないのでオープンな動作。足を閉じる筋肉である内転筋と腹筋は一緒に働きやすい性質があるので、足にミット等を挟むとやりやすくなります。
慣れたら早く大きく行います。
胸から重りを離すと負荷が増します。
いかがでしたでしょうか。ご自身のトレーニングにご活用頂ければ嬉しい限りです。